出不精日記

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カテゴリ:田辺聖子先生の本( 3 )

そのときはそのとき 楽老抄Ⅳ 田辺聖子著

 田辺聖子先生のエッセイです。


 


 20代なったころはじめて田辺先生の本を読んだのが、「カモカのおっちゃんシリーズ」でした。


 カモカのおっちゃんこと亡くなった夫の河野純夫さんや、友人たちと飲みつつ人生を語り合うエッセイで、田辺先生の女の意見だけでなく、カモカのおっちゃんたちに男の意見を吐かせ、違う見方考え方もあることを示され、面白く読みながら人生のお勉強をさせていただきました。


 


 それからウン十年。エッセイのほかに大坂を舞台にした恋愛小説や、王朝物語、「源氏物語」の新訳など、読み続けてきましたがまだあきません。


  田辺先生の本は、面白く楽しく、人の世の悲しみはさらりと受け流しつつ、しかし実は深く考察されています。


 


 例えばこの本には「弱音」というエッセイがあります。


 


 私は、男より女のほうが生きにくい、と感じている。なぜなら、男は男同士、〈鎧が重たくなった〉と弱音を吐くことができるが、女は女同士で弱音を吐けない(いつ、寝首を掻かれるかしれない)。かつ、弱音は男にいうこととも違う。弱音は自分より強いものへ、訴えることだから。


 


 田辺先生の男友達は、「弱音は、男が自分で自分を嗤うことや。これが女にはできません」と言う。さらに女には自分を嗤うことはできても、人の笑いを取ることはできないし、男は女の弱音なんか聞きたくない。


「おんなはいつも自慢とうぬぼれで、エエとこを宣伝して、売りこんでるほうが可愛らしいわい!」


 


 なるほど、漫才でも花子さんは突っ込みで大助さんがボケですね。


 


 しかし田辺先生は弱音を吐くことにあこがれつつ、木曽義仲が心を許した乳兄弟の今井四郎に「鎧が今日は重たい」と弱音を吐いたような男同士の友情も、めったにないことだから800年の間人々はあこがれてきたのだと書かれています。


 


 


そのときはそのとき 楽老抄Ⅳ 田辺聖子著・集英社


 


 


 


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by sacchyant | 2009-07-25 00:48 | 田辺聖子先生の本 | Comments(10)

楽老抄Ⅱ あめんぼに夕立 田辺聖子作

 田辺先生のエッセイは、仲間が集まりおいしいお酒を飲みつつ世相を論評する、というのが「カモカおっちゃんシリーズ」以来のパターンでありますが、それが先生とは違う意見とものの見方を示し、読者を飽きさせません。



 しかしカモカシリーズの最初の本(いま見ようと思ったら友人に貸し出し中やった)からは、メンバーが変わってしまいました。



 第一にカモカのおっちゃんがいなくなってしまった。



 でも田辺聖子先生はメリー・ウィドウを楽しんでおられるようです。

 カモカのおっちゃんにするべきことはした、と悔いることがないということでしょうが、しかしこの本より前の介護の最中のエッセイでも、苦労を笑い飛ばしているような明るさがありました。

 それは自分を突き放して見ることができるプロの作家だからでしょうね。



 この本の中からエッセイを3編ご紹介します。



 「日本語論」

 家族にまで「あげた」という謙譲語をつかうことについて、飲み仲間の昭和党や秘書のミド嬢と論評させれています。



 しかし近頃はペットにも使うし、テレビの料理番組に出演している料理研究家の先生たちは、フライパンや食材にまで使いますね。



 もうひとつ「ら」抜き言葉が槍玉に上がっています。

 実は私は「ら」抜きです。

 ちょっと言い訳をしたいのですが、正調さぬき弁は「ら」抜きなのです。香川県など一部地域の方言は「ら」抜きだと、金田一春彦先生の本で読んだとおもうのですが、どの本だったかなぁー。



「私の靖国」「私の靖国Ⅱ」

 田辺先生の子供時代のこと、従弟のユウイチ兄ちゃんは、家のために学業を途中でやめ奉公に出て苦労しましたが、やがて店を持って独立できるはずでした。でも出征して戦死してしまった。元日本兵の横井庄一さんが発見されて帰国したときの「もしかしてユウイチも」という一族の思いをしみじみとつづっています。

 

 
楽老抄Ⅱ あめんぼに夕立 田辺聖子作・集英社


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by sacchyant | 2007-05-30 19:31 | 田辺聖子先生の本 | Comments(0)

春情蛸の足 田辺聖子作 ―ダイエット中は読むべからず―

 きょうのNHKの朝の連続ドラマ「芋たこなんきん」(田辺聖子先生をモデルにしたドラマ)を見ていたら、関西と関東のすき焼きの違いが話しにでてきました。

 藤山直美ふんする町子先生の友達の彼氏には、関東出身の奥さんがいて、彼氏は関西風すき焼きが食べたいのに関東風を食べさせられているので、町子先生の友達が関西風を食べさせる約束をしていた(ややこしいな)



 あ、この話は小説で読んだ!



春情蛸の足 田辺聖子作・ちくま文庫



 この本は短編集で、どの小説も食べ物にまつわる恋愛小説。それもドレスアップして出かけて緊張しながら食する食べ物ではなく、大阪の庶民の食べ物ばかりです。



 短編小説の題をちょっと書き出してみます。



 春情蛸の足(表題作)

 慕情きつねうどん(きつねうどんは私も好き)

 人情すき焼き譚(この話が今日のドラマにでてきた)

 お好み焼き無情(ここに出てきたお好み焼きの焼き方は参考になった)

 たこやき多情(これを読んだとき、たこ焼きが食べとなったなぁ)

 ほか3作

 

 こんな庶民的な、おいしい食べ物が哀愁のある恋愛小説になるとは!しかも出てくるのは中年男女。

 さすが食い倒れの大阪!



 さすが田辺聖子先生!



 (小説は全部面白いけど、ダイエット中の人には酷やな)



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白梅(と、思う)



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by sacchyant | 2007-01-27 23:20 | 田辺聖子先生の本 | Comments(0)